福昌寺・飯沼康祐の 旬粥日和 ~趣を以って粥を食す~
六月
カリカリ小梅とモロヘイヤの粥
クールな勝負服を纏い
心引き締め、夏を乗り切る
全国的に6月1日には衣替えが行われます。夏服になると、夏休みを待ち遠しく感じる人も多いのではないでしょうか。しかし古くは心身の穢れを除く「物忌み」の日に行われる祓いの行事でした。また、平安時代には宮中で天皇の衣を更(か)えることを司る専門職を「更衣(こうい)」と呼び、かの有名な光源氏の母は桐壺更衣として描かれています。宮中以外でも衣替えに合わせた様々な習わしがあり、餅を食べて暑い夏の無病息災を祈る地域が多かったようです。意外にも歴史の深いこの行事ですが、新たな衣類に袖を通すと、不思議と気が引き締まるものです。その気持ちこそが魔を除け、福を呼び込むことにつながると信じて止みません。四季折々でこうした行事を散りばめた先人たちに敬意の念を忘れてはなりませんね。
気持ちも新たに今月の一杯は、夏バテ予防にもお勧めのカリカリ小梅とモロヘイヤのお粥です。ジメジメと蒸し暑く食欲が落ちがちなこの季節、梅の爽やかな酸味と、青菜類の中でずば抜けた栄養価を持つモロヘイヤのツルツルとした食感で食が進むこと必至です。
静かに座り、季節の恵みをいただく。そんな当たり前のことを有り難く感じることこそが、心ゆたかな生活のはじまりなのかもしれません。