Vol.3 尊厳のある死月イチ連載「杉下由美の終活コラム」

Vol.3 尊厳のある死

  • 杉下由美氏のお母さま

「神様、もう僕は死んでもいいですか?」

 

この言葉は、10代のころに読んだ漫画の中のセリフです。

秋里和国さんが描いた漫画の中の最後の決めセリフなのですが、今でもストーリーとともに覚えています。なんといっても当時は「生きるとは何?死とは何でしょう?」という様な哲学的なことをせっせと考えているお年頃なので、こんなセリフに出会ってしまうと、ときめいてしまうのですね。

 

あれから40年。「死」はドラマティックなものではなく、私にとって生活の中に突然に現れて、家族や友人を連れて行ってしまうものになっていました。もちろん、誰にもコントロールができるわけでもありませんし、自ら選ぶものでもありません。やはり、神様が関与しているとしか思えないのです。

 

母の介護をしている中で、母の「死」について かかりつけ医から私の考えを求められたことがあります。それは「万が一の時、延命治療をしますか?」と聞かれたことでした。

私は「しません」と、答えました。普通に母の健康について面談をしているときに、母の寿命に関して、家族として決断を求められたのです。

突然に聞かれてびっくりしましたが、すぐに返事をすることが出来ました。私は神様ではないので、母の寿命を決めることはできませんが、命を終えるタイミングを邪魔してはいけないと考えています。

母が元気なころに「ピンピンコロリと逝きたい」と話していたのを覚えていたこと。すでにアルツハイマーで家族がわからず、でも一日一日をディサービスに出かけ楽しそうに暮らしていること。精一杯生きた素晴らしい人生を送った人だと思えること。そして、今もリウマチで破壊された関節の痛みと闘っていることなど。それ等を日頃から考えていたので、万が一の時は延命治療はしないと思っていました。

 

インターネットで「尊厳のある死」と検索すると、実にたくさんの情報がヒットしてきます。

では、「尊厳のある死」とは、どんなものなのでしょう。

私は「自らの寿命を全うすること」だと思っています。

医療が発達した今は、卓越した医療技術のおかげで終えようとしていた命も延命治療で永らえていきます。もちろん、本来は必要なことから生まれた延命治療です。再び日常生活に戻り、生きていくために必要な治療です。

しかし、あまりに発達した医療技術で、終えようとしていた命までつながっていきます。

そして、その選択が家族に託されることが多いことが深刻な問題になっています。

 

戦前は90%ほどの方が自宅で亡くなっていますが、戦後は90%以上の人が病院で亡くなっています。亡くなっていく過程を間近な生活の中で見ることは無くなり、自宅から離れた病院の中で起きているのです。搬送された病院で急に医師から聞かれる「延命治療をしますか?しませんか?」の問いかけに、とっさに応えることは難しいでしょう。命のことを選ぶのは、神の領域のように思ってしまうからです。「私が選んでいいのだろうか・・・・」

 

核家族になってから、日常を一緒に暮らさなくなってから、どんどんと難しい選択になってきています。だって、最期のことをどのように考えているのか家族でもわからないのです。

 

お盆や正月などに、介護や身じまいについての話をぜひ家族でしてほしいと思っています。

そして必ず、書き留めてほしいのです。家族は一人ではないので、皆がわかるようにしておかないと、不満に思う人が出てしまうかもしれないからです。

命の選択を本人以外の家族がしなくてはいけない現実はとても厳しいです。

 

「尊厳のある死」は、黙して語らずでは得られません。どのような選択でも本人の意思を伝えることがとても大切なことなのです。意識もあり、会話もできるけど、極度の全身機能不全で入院された男性が、一切のリハビリを拒否されて、老衰の状態で亡くなりました。友人のお父様です。徐々に食事も細くなり、胃ろうもされず、家族、親族に見守られて逝かれたそうです。お話を聞いたときに、自らの意思で寿命を全うされた幸せな方だと思いました。

私もそうでありたいと思っていますが、その時になったら出来るかどうか。せめて、家族にはきちんと伝えておきましょう。

 

 

<杉下由美氏プロフィール>
ファッションデザイナー歴30有余年を経て、6年前に終の衣装ブランド『エピローグドレス「光の庭」』を立ち上げる。
独特な世界観を活かした葬送の品をもプロデュース。
その取り組みは、各メディアで高く評価され独自の活動に注目が集まる新進気鋭のエピローグドレスデザイナー。
舌鋒鋭く、パーソナリティと発言でも群を抜く個性を発揮している。

 

 

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